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第五回 萩原朔太郎 『猫町』

  開催日時:2010/07/14 1317~1531 場所:北大交流プラザ「エルムの森」内カフェ
参加者:Y,M,F 
文責:Y



今回の指定図書は、村上春樹著「1Q84」に引用されていた萩原朔太郎著「猫町」。岩波文庫版は表題作のほかにもう二編の短編小説、十三編の散文詩、二編の随筆が収録されています。詩人ならではの叙情豊かな文章のお陰で、前編100ページ少々の本でも中々に濃い議論ができたように感じます。

それでは、今回の内容を。

――――――――――――――――――

全編通して大体同じテーマが主張されてきたので、主題を絞るのはそこまで難しくありませんでした。

・主人公の思い込みと現実感の落差
・視点を変えることによって物事の様相が一変する

この二つだったかな。
薬物中毒の話が所々に語られていたけれど、ざっと調べたところ著者本人に薬物使用の経歴はなく、死因も肺炎による病死なので、想像で語ったか周りにモチーフになる人物がいたかしたのでしょうか。詩人である時点で、薬物がなくても一定程度の妄想状態には陥っていたやもしれませんが。

全体を通しては一話一話が思いのほか短く、文章量をもっと膨らませられたのではないか、という認識を共有しました。著者は小説が本業ではないので、少し多くを期待しすぎたのかもしれません。

話は何故他の動物でなく『猫』でなければならなかったのか、という話に移ります。

M「自分勝手な猫のイメージから、人間の代わりとして置換されたのでは」
Y「著者の個人志向・都会派の考えを表わすため、分断された個人のメタファを置こうとすると猫以外になかった」
F「猫は迷信や誤信が多く、神聖視される存在だったから、捉えどころのない不可思議な存在として猫を選んだ」

猫が妥当という点には皆同意していました。犬街とか想像してみたけど、何かねえ。詩的じゃないよね、犬って。

次は猫町で作中の主人公が猫町を見るきっかけになった迷子から、迷子になるってどういうことなのかという話題に。
碁盤の目で分かりやすい札幌でさえ迷子になるMは、Fに言わせると何かの才能があるそうです。何か創作活動ができるかもしれませんね。

閑話休題。今回はFが写真を撮ってくれたので、何枚かご紹介。

P7147784.jpg 今回の課題図書『猫町』。陽光の気持ち良いカフェでした。














P7147787.jpg 至極真面目に主題について考え込むY氏















P7147791.jpg 取材拒否するM氏















イケメンF氏の写真は次回撮ります。お楽しみに。


ということで、最後に個々人の好きな所。今回はここがとても濃かった。

Y「苦悩がないということは~」
p111 l3
この本の着地点なのかなと。「老年と人生」は今までの自身の人生を俯瞰した随筆だと思った。

M 「老いて生きるということは醜いことだ」
p104 l1 
と、「そんなものが何になる!そんなものが何になる!」
p71 l8
をチョイス。特に後者は自殺する前の芥川龍之介が言った言葉の補強としてニーチェの言葉を引いたもので、そこから「名声を得ても満たされない→どうやったら満足して死ねるのか?」という死生観を問う形に。

M「特にない。死んだ時はその時」
後に彼自身、この発言は内向的な破滅願望の表れやもしれぬと語っていました。ますます創作に向いている気が。
Y「自分の思想を表現できた時」
自分自身、ポオ類似の考えがあるのやもしれません。認知されたいのかな。
F「才能が枯渇したら」
才能が枯渇した時を見極める才能も必要になって終わらないよね、と自分で言っていました。確かに一理ある案。

生死についてもうひとつ、「二十五歳の姿で千年生きられるとしたら生きるか」という質問をしてみました。
Mは生きない、Yは生きる、Fは先程のと関連して「才能の底が見えず、生活に不自由しない限り」という条件付きで生きるという返答でした。
実はこの質問、twitter上で糸井重里が問うたことなのです。年齢については制限はありませんでしたが。
ちなみに彼は移ろいゆく世界を見続けるために生きたい、という回答でした。思考が内向きか外向きかが大きく作用する問いだったと思っています。

そしてFの好きな所は「この手に限るよ」一編まるごと。
p83-
モテる手の内を明かすと途端にテクニカルな問題になってしまうので絶対にしてはいけない、とのことでした。夢から覚める場面が滑稽で笑えて良かったな、確かに。


長くなってしまった。意外と話したんだなあ。


次回7/24は物理学者リチャード・P・ファインマンの『ご冗談でしょう、ファインマンさん』です。自伝、というか正確には逸話集のようですが、読む前から楽しげでわくわくしています。

そのまた次はトマス・マンの『魔の山』です。物凄く重いので早め早めに読むことをお勧めします。日程未定。

それではまた次回。お楽しみに。
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