開催日時:2010/07/10 1343~1538 場所:D×M
参加者:Y,M,F
文責:Y
今回の指定図書の著者は、日本現代文学の大きな牽引者ともいえる村上春樹。少し新しすぎたかとも思われつつ、慣れてきた我々には主題を探ろうとする意気は育まれていたようで、中々に面白い読書会になりました。気分転換には丁度良かったようです。
それでは、今回の内容を。
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最初にこの本の主題を明らかにしようと思ったのですが、まだ中期の村上作品ということで文章に若干の雑さが見て取れます。
既に数作品が世に出され、それなりに売れ出していた頃本を書くということは、何か強く表現したいことがあったからでしょう。複線回収も完全でない中、著者は何を伝えたかったのでしょうか。
・抗うことのできない性欲
・複数の恋愛(と呼べるか定かでないが)の中での主人公の苦悩
の二つが大きく出ていた気がします。
前者については、
F「早くに結婚してしまって、性生活を抑制されちゃった著者のやりたい願望の表れかねえ」
という意見が。後者に関しては主人公以外の登場人物に迷いがない点との対比が指摘されました。主人公も十分タフなんですけどね。
注意しておきたいのは、彼の作品では年代も舞台も具体的かつ鮮明に描写されているにもかかわらず、物語自体にはほとんど現実性が感じられない、という点です。
登場人物に迷いがなく、言葉を濁さないのはアメリカ文学に受けた影響が多分にあると思われますが、ジャンルとしては『完璧なファンタジー』と形容しても良いのでは。揺れる文、残る謎、すべてを含めて。
話は村上春樹が何故複数作品で芥川賞を取れなかったのか、という点に。
文化史としての作品と芥川賞を考えるなら、一生考え抜いたテーマではなく、高々10年で考えたテーマに沿って書かれた村上作品が受賞しなかったのは妥当、という意見が出されました。
文壇の審査員が未だ村上春樹の特異性を嫌ったから、というのも考えられますが、それはそんなもんでしょう。文学作品の評価なんて根本的にいえば好き/嫌いで決まってしまうものです。審査員全員が客観的に作品を評価することなどできるはずがないのです。完全に客観的に選ばれた作品、というものも選ばれ得たらそれでつまらないのでしょうが。
あと何故あえて「ノルウェイの森」をタイトルにしたのかも聞いてた気がするんだけど、ぜんぜんメモ書き遺してなかった。残念。
なんでだろうねー。著者自装のカバーのデザインの理由についても話してた気がするんだけど。
それは森の緑×補色としての赤、でまとまったんだっけか。
あと一応好きな女の子聞いてみたんですが、
F・Y「ハツミ以外いにいるの?」
M 「いや緑だろ」
という、至極真っ当な結果になりました。直子とか選ぶ人いないですよね。ですよねー。
最後に各人の気に留まったところをさらっと。
Y 「棺桶みたいな列車」
下・p282 l2
描写の侘しさが印象に残った。村上が繰り返し伝えているのは有限と死の存在だと思ったので。
F 「鶏肉と性病と喋りすぎる床屋が嫌いだ」
下・p235 l8
言い回しが昔流行ったらしい。皮肉の表現の仕方が独特だよね。
M 「僕は死者と共に生きた」
下・p252 l5-
来た、と思ったところ。死についての印象的な考えが見て取れます。
こんなんでいいのかしら。書いてるうちに上手くなるでしょ。
次回7/14はこれも村上春樹の1Q84から引っ張ってきた萩原朔太郎『猫町』です。100ページほどの短編集なので、さらっと読めるでしょう。詩人の書く小説とはどのようなものなのか、気になるところです。短いから早く終わってしまうやも。
そのまた次は7/24、ファインマンの『ご冗談でしょう,ファインマンさん』ですね。
この人楽しそうです。期待しよう。
それではまた次回。お楽しみに。
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