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万朶会 繋げる読書会

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第二回 ポオ 『ユリイカ』

開催日時:2010/06/21 1639~1811 場所:Moulin de la Galette
参加者:Y,M,F 
文責:F



二冊目にして今後の指定図書の中で最も難解なのが来た,との共通認識が開催前から存在していた今回。しかし三人寄れば何とやら,案外『読めていた』のかもしれないと思わせる会となりました。

以下軽く整理しつつ。必ずしも会の次第には沿いません。
――――――――――――――――――

まず何で選んだの?と言う点。
責めるのでは決して無いけど,良くもまぁこんな難解な物を,という話。

Y「書き終えて死んでもいいと思えるような命題って一体何なんだ,と思って。」

一同納得。


ではポオは何故ユリイカを書いて死んだのか。

Y「宇宙について書いたのはフェイクで,これは遺書だ。」
F「最も大きな解のない問題を求めた結果,宇宙に行きついたのではないか。」
M「死期を悟ったからこれを書いたんじゃないか。」

会話の流れとしては,Fの説を選択して次へ。


何故こんなに難解なのか,考えてみようぜ。

自分が理解できてないから?ポオ自身よく分かってないから?普遍的に理解しがたい題材だから?

どれにも引っかかるのは取り敢えず先程のF説だった,という事でした。
F「大体科学と神を並列に扱っていくとさー,どうにも具合悪いよねー。」


ここでYが鋭い。
Y「ここに書かれてる神って,キリスト教的な神よりも更に高次の存在なんじゃないかな」

ポオの生きた時代は宗教が大きく揺らいだ時期だった。
しかし,その勢力は依然強力であった。

ポオはここで,不動にして究極なものを追い求めたのではないだろうか。
その存在を信じたい,認識したいと願っていたのではないだろうか。

全能を知れば,未来を知ることにもつながる。
分かりきった未来など,生きるまでも無い。

タイトルは『ユリイカ』,即ち「見つけた」という意味の古代ギリシア語の現在完了形。


結局最初に出しあった『なぜ書いたのか』に対する三者三様の答えは,どれも総意としての正解を構成していたのかもしれない。推論を進めていけば,そういう事になる。僕らの想定する正解が,ポオの意図に沿っているかは別にして,読書会の一つの可能性が見えた瞬間だった。


Yの興味関心は最大の論点となったので,他二人の気になった所をちらっと。

F
・本の最後
詩的表現の極致!なんだあれは。最初からこれ書けよ!

M
・p114~
『地球の収縮と共に生物が進化する』
発達過剰で滅亡という定番の原点?


かなりの程度作品解説に依存したが,これで良い作品だったと思われる。
折角なのでポオの主著『モルグ街の殺人』あたりは関連として置いておく。



次回は6/30,仏文豪バルザックの『ゴリオ爺さん』です。新潮版を指定しています。
更に次は翻り現代文学へ,村上春樹作・映画化予定の『ノルウェイの森』を急遽指定。こちらは7/10。

ちょっと入りやすくなるよね。ふふふ。
それではまた次回をお楽しみに。

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第一回 川端康成 『古都』

開催日時:2010/06/02 0915~1020 場所:教育学部2階
参加者:Y,M,F
文責:F


記念すべき第一回。
開催日が前日に決定するというドタバタがあったものの,最少催行人数プラスワンでしめやかに執り行われました。要は3人での船出となります。

久しぶりで進行は手探りにならざるを得なかったけれど,一時間ではおそらく足りないであろう事が確認できる程度の盛り上がりでした。所謂,及第点。

以下,簡単に整理。初回なので箇条書きです。
――――――――――――――――――

<着眼点>

Y
・太吉郎が舞妓に舌を吸われる場面……「堕落したな」
・竜助出てくんの急じゃね?
M
・苗子の言う「幻」について
・スミレ二株の比喩
F
・本筋に掠りもしねぇじゃん的台詞 「忘れんとおこ」「人間て……」 おそらく無意識に出た主張と判断


<語り合う>
全部なんだかFによるリードだったのでバランス改善……まあ良いか 

「もみじとスミレは何かを象徴しているのか?」
・Y「男に付随する女のイメージ」
・F「竜助と真一,お稚児さんの真一はスミレとして,より男性的な竜助はもみじとして」

「千重子は誰が好きなのか?」
・F,Yは真一 F「『もう,あないちっちょうなれしまへんな』っていうのがまさに!」
・Mは秀男 苗子の結婚に関する葛藤にはより説得的で,他の二人からすると新鮮な意見でした

「千重子と苗子,どちらにより幸せになって欲しいか」
・Y「苗子は幸せになる権利を自ら放棄しそうなので,必然的に千重子のが幸せになる」
・F,Mは苗子。判官贔屓に似た心境。
F「作品内の人間関係だと,千重子の積極的関与が無ければ苗子幸せになれないよ」

「もみじと杉を女性になぞらえる時,どちらが好き?」
ひでぇ質問だ。(笑)
・M「どっちも好き!」 これもひでぇ(笑)
・Y「23,4で会社の同僚として一年くらい遊ぶのがもみじだろう。
で,30代に入ったくらいの時に『嗚呼あんなこともあったなあ』ってなるんだろう。」 なかなか逞しい。


みんな解説にあった「作品の特色」に首を傾げていたが,これが最初の川端作品だとそう思うのも已むを得ない。というのも,この作品が他の著作に比較して頗る真っ当な題材を採っているのだから。少なくとも僕が読んできた中ではそういう感想になります。真っ当なのも異常なのも,川端文学は僕大好きですが。

ということで,cf.として
『雪国』 『眠れる美女』 が挙げられました。前者は真っ当,後者は異常。

更に,今後取り上げる予定の大江健三郎に関する予備知識のため,
『芽むしり仔撃ち』 『死者の奢り』 『個人的な体験』 がオススメとして出されました。


各々が読書会をどう考えていくのか,楽しみな所です。

次回は06/21の夕方から,指定図書はポオの『ユリイカ』です。
また参考までに,第三回の指定図書はバルザックの『ゴリオ爺さん』となります。日時は未定ですが今月中でしょう。


指定図書一覧

 
現在確定している指定図書は以下の通りです。


【指定順確定分】
  

・太宰治 『グッド・バイ』 新潮
・尾崎紅葉 『金色夜叉』(上下巻) 岩波
・中上健次 『枯木灘』 河出
 東京から来るKD氏をお迎えしての一冊。



ここから下は8/4 選書会選定図書。併せて選者と一言コメント付。

・ヴィアン 『日々の泡』 新潮
選者M 「その場で選んだ。」 「20世紀の恋愛小説中最も悲痛な小説」だそう。

・西村賢太 『どうで死ぬ身の一踊り』 講談社
選者F 「Kとかは好きそう。ヘン!クズ!俺だいぶこいつに入れ込み始めてる。」

・筒井康隆 ダンシング・ヴァニティ 新潮
選者K 「絲山賞でFが勧めてたからみんな持ってるしょ。日本のSF畑の人の代表ってことで。」

・カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』 ハヤカワepi
選者F 「愚鈍な主人公。うまく訳されている。回顧が非常によく描かれている。晩秋に読もう!」

・小松左京 『復活の日』 ハルキ文庫
選者K 「左京さん追悼ということで。日本沈没だと今更感だし…さよならジュピターが手に入ればなあ」

・ギャリコ 『ジェニィ』 新潮
選者Y 「ファンタジー的な雰囲気ということで。猫語の教科書の人だよ!」

・新田次郎 『槍ヶ岳 開山』 文春
選者K(元山岳部) 「山小説を入れたかった。なぜ山に登るのかという問いは、人間の根幹に関わっている」

・森鷗外 『雁』 新潮
選者M 「森さん読んでないなー、一冊欲しいなー、でも舞姫はメジャーすぎだなー、ってことで」

・クッツェー 『恥辱』 ハヤカワepi
選者F 「絲山さん絡みで。テーマは転落。女がらみの転落を現代風に書いている。自戒をこめて…」

・ケストナー 『飛ぶ教室』 講談社
選者Y 「タイトル(ジャケ)買い!」

・三浦綾子 『氷点』(上下巻) 角川
選者Y 「高校の朗読で一部だけ読んだ。ずっと気になってたので。」


【指定順未確定分】

なし


最終更新日:11.08.17

万朶会について

万朶会は、北海道大学の学生による読書会。
週に一回ほど、課題図書を読んだ上で議論を行うというものです。

読書会を行うに当たって、次のような原則を設定しています。
・最少催行人数:2
・全員が未読の図書を選定
・一度取り扱った文筆家の著作は取り扱わない
・その本の中に何らかの思想を探ることのできる図書を読むのが望ましい。主に古典。
・主題を意識・予想して読む
・課題図書は随時提案可。ただし、その図書について情報の取得できる範囲で簡単なプレゼンを行うこと。

この読書会が、古典に関する教養の充実・各々の思想の強化に繋がることを願います。
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